人は誰もが、いつかは…死んでしまう。 でも、人生の終わりを 自分らしく 幕を下ろす事が出来たら…と、 きっと誰もが願う事だと想う。 では、「自分らしく」って一体 何だろう？ 例えば病気になってしまい、 残りわずかしか…生きられないとわかったら。 人は…

家族全員が揃った。 母を皆で囲みながら、色々な話をした。 母が、この数週間を 頑張って生きてきた事。 母がどんなに 明るく 楽しい人だったか。 皆、笑ったり 泣いたりしながら 母の思い出を語り合った。 皆に囲まれながら、母は ただただ 眠っていた。 で…

その夜、母は痛み止めを服用した。 いつも飲んでる痛み止め。 痛みからは、すぐに解放されるはずだった。 でもその日、母の痛みは 治らなかった。 30分経って、もう１錠服用。 でも 痛みは治らなかった。 血圧を測った。もう 機械では測る事が出来なかった。…

ん？と違和感を感じたその日。 在宅医療の先生が往診にみえた。 先生の話に、一応は返事をする母。 だけど…私と先生は アイコンタクトで 通じ合えた気がした。 そう。残念ながら、もう 本当にその日が近づいているという事に。 お昼前、トイレに行きたいと言…

ついに、その時がきたのかな…。 ある朝 いつも通りに起きて、いつも通りに寝ている母の姿を いつも通りに覗いてみた。 ん？ 何だろう？この違和感は…。 でも母は、ちゃんと息をしている。 眠っている。いつも通りに。 でも、どうしてだろう…。 ん？ その違和…

母の最期の時まで、自宅で。 私は、母の希望を叶えたかった。 自宅で看取る、覚悟を…。 まだ、人の死を 目の当たりにした事の無い私に、どれ程の覚悟が持てていたのか…。 だけど私には、支えてくれる家族 在宅の先生、訪問看護師さんが傍に居てくれる。 大丈…

「残念ながら、医療には限界がある」と、 ある先生は言った。確かにそうだと想う。 だけど、人の心は それでは終わらない。 在宅医療の先生、訪問看護師さん達は 自分達に出来る事を、一生懸命に探してくれていたんだと思う。 母の希望を、聞き出そうとして…

母には、命の期限を伝えていなかったけど… 母は、気づいていたのかなぁ？ それとも、ポジティブな母は 全く気づいていなかったのかなぁ？ もしも、夏を超えられないと知っていたら… 母は、何かを残しただろうか。 もしかしたら、母は 何かを残したかったのか…

６月になると、身体の痛みが強くなり、痛み止めを服用する回数が増えた。 食べてなくても、気持ちが悪い。 痛みと吐き気が、母を支配していた。 ベッドから、起き上がれる時間も短くなってしまった。横になりながら、皆の話を聞いていた。夫と孫が、将棋をさ…

７人での生活が始まった５月。 毎日が楽しかった。いつも誰かが話していて、いつも誰かが笑っていた。 そんな中でも、母自身が 一番 家族を笑わせていたのかもしれない。 俗に言う「かかあ天下」スタイルだった両親。母は、悪びれる様子もなく いつも父に文…

新緑の５月中旬。 母はついに、病院の先生に言われてしまった。 「今は もう出来る治療がありません」と。 その言葉を、母はどう受け取ったのかはわからないけど…。 いつも強かった母は、初めて弱い口調で私に言った。 「出来る治療が無いんだって…。家に帰…

母の余命が、残り数ヶ月とわかった頃 梅の花を見に出かけた。 「綺麗だねぇ」と花に近づく、母の後ろ姿を 忘れないでいようと想った。 父と３人で写真を撮り合った。 写真が好きでは無い母との、貴重な１枚だ。 桜の花が咲く頃には、体調を崩し入院いていた…

昨年６月、大切な母を亡くした。 ガンを患い、頑張って生きてきたけど…。 それでも…力尽きてしまった。 母は、自分の余命を知らなかった。 だから、まだまだ生きられると想っていた。 だって、まだ死ぬ訳にはいかないから。 孫の受験が気になるから。 孫の晴…