生きていてくれて ありがとう

あなたに出会ったのは…30年前。

中学3年生の夏。

少し不良っぽかったあなたと、

どこにでもいる、普通の女子中学生だった私が…

何故か、同じ時間を過ごす事になったね。

色んな話をしてくれた、あなた。

あなたの生きてきた、たった15年の人生は

壮絶だった。

普通に育った私には、理解 出来なかった。

 

私が、お母さんと買い物に行っては

お菓子を買って貰っていた幼少期。

あなたは、10円を小さな手に握りしめ

パンの耳を買って、空腹を紛らわせてた。

私が、暖かい部屋で過ごしていた学童期。

あなたは、割れた窓に暖房器具もない部屋で

布団に潜り寒さをしのいでいた。

テレビに出てくる様な、借金取りに

怯えていた。

自分の家の電気だけが、街から消えた。

 

そして、思春期で出会った私達。

強がって生きるしか無かったあなた。

自分の力で、生きるしかなかったあなた。

それでも、不良みたいにしてるのは

家庭環境のせいじゃないってあなたは言った。

ただ、自分のやりたい事をやってるだけだって

あなたは言った。

 

そんな時代を生きてきたあなたは

優しかった。

ごくごく普通の私に、優しかった。

一緒に居られる毎日が楽しかった。

あの、中3の夏休みの想い出は

私の心に…焼き付いた。 

 

相変わらずのあなたと、普通の高校生になった私は、別々の人生を歩み出した。

 

その後の、あなたが過ごした10年と少しは

私には想像も出来ない月日でしょう。

その10年の間に、私はお母さんになりました。

2人の子供の、お母さんになりました。

シングルマザーになったけど

毎日を楽しく過ごしていた日。

 

あなたと再会しました。

 

変わらない優しいあなたに再会。

そしてまた、色んな話をする様になり

同じ日々を過ごす様になって

家族の暖かみや、安心感を

知らないあなただったけど

私達は…家族になった。

あなたの子供も産めました。

 

こんな幸せな毎日が日常になっている。

こんな穏やかな日々を過ごせているのは…

あなたが、壮絶な幼少期を

生き抜いてくれたから。

やりたい放題だった時期をも、死なずに

生き抜いてくれたから。

 

あなたが…生きていてくれたから

「今」がある。

 

生き抜いてくれて ありがとう。

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